Annibale Fagnola 1936
1936年製アンニバル・ファニオラ
アンニバル・ファニオラは、19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した、イタリア・トリノ派を代表する名工のひとりです。
正規の徒弟制度には属さず、歴史的名器の研究と実制作を通じて独自に技術を磨いた作家でありながら、その完成度の高さから同時代の著名な製作家たちと並び称される存在となりました。
彼はグァダニーニ、プレッセンダやロッカを中心とするトリノの伝統を深く研究しつつ、ストラディヴァリをはじめとするクレモナ派の古典様式を取り入れ、自身の作風を確立していきます。
1906年ジェノヴァ、1911年トリノでの国際展示会において高い評価を受けたことを契機に、その名声はイタリア国内のみならず広く知られるようになりました。
本楽器は1936年製、ファニオラ晩年の成熟期にあたる作品です。
長年にわたる制作経験に裏打ちされた安定した構築と、洗練された造形感覚が融合し、ストラディヴァリ・モデルならではの端正なプロポーションが明確に表れています。
音響面においては、立ち上がりの良さと明瞭な発音を備えつつ、全音域にわたって自然なバランスと広がりを感じさせます。
透明感のある音色の中に芯の強さを併せ持ち、ソロから室内楽まで幅広い演奏表現に応える一挺です。
20世紀モダン・イタリアンの中でも、歴史的様式への深い理解と実用性を高次元で両立させた作家として評価されるファニオラ。
本作は、その到達点の一端を示す、完成度の高い作品と言えるでしょう。




