日本ヴァイオリン

Hannibal Fagnola 1905

アンニバル・ファニオラ 1905年製

1894年、27歳のファニオラは故郷モンティリオから親戚数人がいるトリノに引っ越します。モンティリオではアマチュアギター製作家から手ほどきを受けており、トリノではその持ち前の模倣技術によってカルロ・グァダニーニのギターの精密な模造品をつくり、見事トリノの楽器商に本物と間違われたという逸話が残っています。その後、リナルディの工房に入り、ロマーノ・マレンゴのもとで専門的なヴァイオリン製作の訓練を受けることになります。
おそらくそこでグァダニーニ、プレッセンダ、ロッカといったトリノの名品を目の当たりにして大きな衝撃を受けたといわれており、それらのコピーを繰り返し製作しました。
リナルディのスタイルの追随はせず、クレモナ、トリノの名工をも模倣することにより大きな功績を残すことになります。
トリノでは当初より弁護士であり資産家のヴァイオリンコレクター、オラツィオ・ロジェッロの楽器商としての助力により国内外の愛好家を着実に増やしていきました。
1906年にはジェノバとミラノでの博覧会にて賞を獲得し、公に知られることになります。この成功により、その翌年にはより大きな工房を構え、ジェノベーゼをはじめとする優秀なアシスタント達とともに、その工房は1921年までの激動の時代の最中、存続しました。
その前年、ファニオラの挑戦期とも言える1905年に製作されたこの作品は、反射の美しい黄金色の下地に厚く柔らかいオレンジブラウンのニスが印象的です。
当時のファニオラは一貫して質の高い材料を用いており、また非常に高い製作精度を誇っています。スクロールは常に注意深く優美に造形されており、黒い面取りが施されています。この頃から裏板のボタンにはファニオラの一つ特徴でもあるD型の切り込みがあります。
立体的でフォーカスされた力強く華やかな音色を備えており、演奏家にとって極めて実用性の高い逸品です。

製作地
イタリア トリノ
カテゴリ
モダン