日本ヴァイオリン

Nippon Violin Society

日本ヴァイオリンソサエティ-演奏家と弦楽器をつなぐプログラム-

日本ヴァイオリンは創業以来長年にわたり楽器に関わる全てのことに関わってきましたが、様々なニーズに応えられるよう業務の範囲も広がりました。そこで、これまで個別に対応していた事柄を取りまとめ、現在の日本の音楽界に必要と思われる組織を作る取り組みをスタートしています。

特にこだわりがあるのは、演奏家への名器の貸与です。現在に至るまで、のベ1000人を超える演奏家へ楽器を貸し出し、若い才能のサポートをさせて頂きましたが、楽器価格が高騰している今、まさにその重要性が高まってきております。

楽器オーナー(会費制)

  1. 名器のご紹介
    演奏楽器としてだけではなく、資産価値の高い楽器をご紹介いたします。
  2. 保管・管理、メンテナンス
    貸与が決まっていない楽器は、最高の状態に保つため、弊社の金庫で湿度・温度管理を徹底して保管いたします。
  3. 楽器保険会社の手続きサポート
    ご希望があれば楽器保険に関してご相談を承ります。
  4. 演奏家への貸与
    弊社は多くの演奏家と交流があります。オーナー様、所有されている楽器の特徴、演奏家のマッチングを考えて、貸与のご相談を承ります。
  5. 貸与式の開催
    オーナー様と演奏家の貸与契約について、全ての手続きを行います。
    ご希望に応じて、お披露目を兼ねて、弊社のサロンにてコンサート開催をお手伝いいたします。

演奏家(登録制)

貸与を希望されている楽器オーナーをご紹介します。
すでに多くの実績を積んでおり、これまでも多くの演奏家の皆様にご案内してまいりました。
素晴らしい楽器を弾くことが、演奏家にとっての最高の喜びだということを理解して、出会いを設けます。
ご希望の方は、是非、日本ヴァイオリンソサエティにご登録ください。

ソサエティに関するお問い合わせはこちら

インタビュー

日本ヴァイオリンソサエティ=これから演奏家を支援したいと思っていらっしゃる方に、弊社が相応しい楽器を紹介し、さらにその楽器を貸出して応援したい才能のある演奏家と引き合わせ、その結果楽器オーナーも演奏家もお互いにメリットのある形でマッチングします。同じように名弓トゥルテのオーナーでいらっしゃる住野泰士さんとその弓を貸与されてご活躍中のチェリスト辻本玲さん。素晴らしいご関係でいらっしゃるお二人にお話を聞きました。

1)辻本さんとの出会いについて。

(住野)以前から辻本さんの演奏については素晴らしいと思っていました。ガスパール・カサド国際チェロ・コンクールの時も大体ほとんど全部聴いていまして、時々演奏会にお邪魔したり、楽器店のフェアでお目にかかったりなどずいぶん前からなんとなく関わりがありました。

2)弓をお貸出しすることを考えたきっかけはなんでしょう。

(住野)いろんな財団から楽器を貸与という話はありますけど、弓の貸与ってあんまり聞いたことがないのでそういうことをちょっとやってみる価値があるのではないかと思ったものですから。
私の商売柄、車のレースでいうと一番手っ取り早くタイム稼ぐっていうのはタイヤなんですよ。
エンジンに相当するのが楽器だとするとやっぱりタイヤに近いですね弓の存在は。タイヤを変えてみるというのが一番結論にたどり着くのが早いです。もちろん良い弓を使いこなせるかどうかという話ですけどね。
私が習っている岩崎洸先生も楽器より弓の方が大事だと、ずっと一貫して言われています。
そんな折にアメリカのシカゴの楽器店で昔の名演奏者が使っていた弓を弾く機会があったり、結構昔の名演奏者、チェリストが使っていたすごい弓なんかが最近流通するようになって来たんです。
そこで辻本さんのような方にすごい名弓で弾いていただいたらどういう音が出るんだろう、やっぱりすごい音が出るんだろうなっていうようなことも含めて、ちょっと弾いてみていただきたいという思いになったのです。ある意味、自分が使うより上手い人に貸した方がいいと思いますからね。
それとあわよくば辻本玲さんみたいな方に貸すと価値も上がるのではないかとか、そういう下心もありますけどね。

3)辻本さん、実際その貸与のお話があった時、どのように思われましたか?

(辻本)私がその頃使っていた弓、ラミー(Lamy)を酷使しすぎて困っていた時に、日本ヴァイオリンの中澤創太社長から、住野さんが素晴らしい弓を自分に貸してくださると伺って、とても嬉しくて。弓は楽器と違って消耗品ですし、割と壊れやすいので、弓の貸与というのはなかなかありません。
しかも名弓のトゥルテ(Tourte)を弾かせていただけるというのは本当に嬉しかったです。

4)弓(トゥルテ)を貸与されてよかったことは?何か変わりましたか?

(辻本)実際使ってみたら全然違う感じで、軽く弾いてもすごく音が通る。
例えれば木を削ったときにシュッっとひと削りで気持ちよくいくような、いい道具で削ると多分そうなるんじゃないかと思うんですが、そんなイメージです。しかも低弦は本当に深く、強くてもう全然違うんだなって感じでした。
初めてこれを使った本番がサントリーホールでの小品を弾く演奏会でしたが、本当にめっちゃ気持ち良くて。今まで困っていたことが難なく出来たり、音色の幅がもっと拡がる感じでした。
楽器との相性もすごく良いと思いますが、逆にその弓を例えば新作チェロに使うことによって、その新作が良くなる(成長する)っていう。
本物(トゥルテのような名弓)を知ることによって他のものを弾いてもトゥルテの音を求めることができるようになるということがわかった気がします。

5)辻本さんへ弓(トゥルテ)の貸出しをされて、コンサートへは行かれましたか?
その時どのように思われましたか?

(住野)演奏会で実際に音を聴いて、やっぱりそりゃあすごいなと。(Stradivariusとの)ベストマッチというか、もう言うことないと思いました。
話は変わりますが、若い方10代の方などの演奏を私はたくさん聴いていて、皆さん弾けて弾けてしょうがないと思うほどに上手なのですけどね、でも自分の「音色」ということを考えながら演奏している方って、なかなか20代ぐらいまでは難しいのではと思ったりするんです。
「音色」が大事なことに気づいて弓を替えようと思う、あるいは(大人になって)良い弓を持てるようになったから、ちょっと音色について考えるようになる、そうしてはじめて、やっぱり弓による音色の違いは大事だなと思うようになるんですね。そういった若い人に弓を貸してそれに気づかせてあげたいとは思いますね。

6)弊社では日本ヴァイオリンソサエティという、名器オーナーと演奏家を繋ぐ楽器貸与マッチング・システムを設けておりますがどう思われますか?

(辻本)特にチェロに関しては本当に若い優秀な子がたくさんいるんですけど、でもやっぱり楽器がもう本当に買えない、お父様が普通のサラリーマンとかではやっぱりなかなか買えない世の中になってしまっていて。
弓もちょっと前ぐらいまでは買えたかと思いますけど、それも多分追いつかなくなってくるみたいな感じになってますよね。
そんな中でやっぱり貸して頂ける、そういう支援してくださる方がいらっしゃって、多分どこかで名器が眠ってるお宅とかたくさんあると思いますし、そういうものをやっぱり貸与とか安く譲っていただくとか、そういう出会いみたいなものがあればすごくいいなあと思いますね。
若い子でも自分の同世代とかでも、音にすごく敏感な子ってやっぱり楽器がそんなに良くなくてもすごくいい音を出すのです。名器と演奏家をマッチングされるときに、良い楽器に出会えれば技術があればある程度は良い音はするんですけど、そのポテンシャルをフルに引き出せる子っていうのは、音色に敏感な子であったり、自分の声みたいなものを持ってる子であったりするので、ぜひそういう子を見つけてあげて欲しいですね。
有名になってからパトロンがつくっていう形は多分たくさんあると思うんですけど、この子は絶対に上手くなると思える音色に敏感な子を、その前のところから支えてあげられる事が出来たらいいなあと思います。

7)今後の思いなどをそれぞれお聞かせください。

(辻本)長く(お借りしている)トゥルテを使いたい、とか(笑)。
本当は僕も住野さんにトルテを返して若い子に貸した方がいいのでしょうけど、もうちょっと、もうちょっと弾かせていただいて・・・

(住野)私もね、辻本さんや佐藤晴真さんに、(後に上野通明さんにも)弓をお貸ししてますでしょう。
もちろん(購入のための)お金の問題にはなりますので、大変ではあるのですが、今後もいいものが手に入るようだったら、まだ貸したい人はいますね。
やっぱりそうやって日本のチェロ界というか、レベルが上がっていくと良いと思います。

住野さん、辻本さん、ご協力ありがとうございました。

住野泰士(弓:トゥルテ オーナー)

4歳よりヴァイオリンを野田淡路氏に指導を受けた。 13歳よりチェロに転向し、東海正之氏に学んだ。数年前より、ジャパン・ストリング・クァルテットのチェリストであり、アメリカ、日本でも活躍する、チェリストの岩崎洗に薫陶を受け、現在に至る。
指導を受けたチェリストに、堤剛氏、芦田雅治氏、毛利伯郎氏やルイス・クラレ、サン・ウォンレヤン、アラン・ムニエ他がいる。NPO 法人「心は灯と音と森の研究所」の主催するコンサートへ、レギュラー・アーティストとして定期的に迎えられ、長野県富士 見町のライティングハウス TOKYO 南アルプス・サロン、江東区亀戸のライティングハウスTOKYO(株)を舞台に、ピアニストの高橋望と共演を重ねて、高い評価を得る。海外の著名アーティストとの交流も盛んであり、Ma Ma-Yo の異名を持つ。愛用チェロはダヴィット・テクラー、弓はトゥルテを使用する。

辻本玲(チェリスト)

NHK交響楽団首席チェロ奏者。
7歳よりチェロを始める。11歳まで米国フィラデルフィアで過ごし、東京藝術大学音楽学部器楽科を首席で卒業(アカンサス音楽賞受賞)。 その後ロームミュージックファンデーションより奨学金を得て、シベリウス・アカデミー(フィンランド)、ベルン芸術大学(スイス)に留学。
2009年、第2回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞(日本人最高位)、併せて「日本人作品最優秀演奏賞」を受賞 (その模様はNHK-BSにてドキュメンタリー番組「チェロ・エスプレッシーボ!~国際コンクールに懸ける青春~」としてオンエアされた)。
2013年トッパンホールでのリサイタルは読売新聞の演奏会評にて「質実剛健な音、得難い逸材」と絶賛され、同年第12回齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞。
ソロ活動と並行して、サイトウ・キネン・オーケストラやアルカス佐世保のレジデンス・カルテットの一員として活動するほか、 チェロ四重奏団「クァルテット・エクスプローチェ」「及川浩治トリオBee」「堀米ゆず子室内楽シリーズ」などの室内楽にも多数参加。
2016年に別府アルゲリッチ音楽祭にてワディム・レーピンと共演するなど実力派として注目を集め、今後の活躍が期待されている。
これまでに、東京交響楽団、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハ−モニ−管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、ロシア国立交響楽団、ベルリン交響楽団等と共演。メタ・ワッツ、オーランド・コール、川元適益、上村昇、山崎伸子、アルト・ノラス、アントニオ・メネセスの各氏に師事。 使用楽器はNPO法人イエロー・エンジェルより1724年製作のアントニオ・ストラディヴァリウスを、弓は住野泰士氏よりトゥルテを特別に貸与されている。