日本ヴァイオリン

Hannibal Fagnola 1905 & 1909

Hannibale FAGNOLA 1905、1909年製

1894年、27歳のファニオラは故郷モンティリオから親戚数人がいるトリノに引っ越します。
モンティリオではアマチュアギター製作家から手ほどきを受けており、トリノではその持ち前の模倣技術によってカルロ・グァダニーニのギターの精密な模造品をつくり、見事トリノの楽器商に本物と間違われたという逸話が残っています。

その後、リナルディの工房に入り、ロマーノ・マレンゴのもとで専門的なヴァイオリン製作の訓練を受けることになります。
おそらくそこでグァダニーニ、プレッセンダ、ロッカといったトリノの名品を目の当たりにして大きな衝撃を受けたといわれており、それらのコピーを繰り返し製作しました。
リナルディのスタイルの追随はせず、クレモナ、トリノの名工をも模倣することにより大きな功績を残すことになります。
トリノでは当初より弁護士であり資産家のヴァイオリンコレクター、オラツィオ・ロジェッロの楽器商としての助力により国内外の愛好家を着実に増やしていきました。

1906年にはジェノバとミラノでの博覧会にて賞を獲得し、公に知られることになります。
この成功により、その翌年にはより大きな工房を構え、ジェノベーゼをはじめとする優秀なアシスタント達とともに、その工房は1921年までの激動の時代の最中、存続することになります。
その前後、ファニオラの挑戦期とも言える1905年、1909年に製作された貴重な2挺のヴァイオリンをご紹介いたします。

当時のファニオラは一貫して質の高い材料が用いられ、精度の高さを誇っています。
スクロールは常に注意深く優美に造形されており、黒い面取りが施されています。
この頃から裏板のボタンにはファニオラの一つ特徴でもあるD型の切り込みがあります。

1905年製は反射の美しい黄金色の下地に厚く柔らかいオレンジブラウンのニスが用いられていますが、一方1909年製にはやや暗めの下地に、より繊細に固いニスを纏っています。
この挑戦期において多くの試行錯誤が繰り返されていたことを窺い知ることができます。

1909年製のヴァオリンは
Dmitry Gindin著
”THE MODERN ITALIAN VIOLIN MAKERS ”
に優れた初期のストラディヴァリモデルの作例として掲載されています。

製作地
イタリア トリノ
カテゴリ
モダン