日本ヴァイオリン

Antonio Stradivari 1728 the "Artot, Alard"

アントニオ・ストラディヴァリ 1728年製 「アルトー、アラール」

1644年に生まれ1737年に他界したヴァイオリン製作家アントニオ・ストラディヴァリ。
この「アルトー、アラール」と呼ばれる1728年に作られたヴァイオリンは、ストラディヴァリの黄金期から後期に差し掛かる橋渡しのような作品です。
呼称であります「アルトー、アラール」という名は、過去の2人の所有者に由来しています。それはベルギー人ヴァイオリニスト、アレクサンドル・アルトー(1815-1845)と、ジーン・デルフィン・アラール(1815-1888)の二人です。
ストラディヴァリが80歳を超え、黄金期(1700年 - 1725年頃)に素晴らしい作品たちを世に送りだしたのちもなお自身の創作意欲は衰えることなく、黙々と製作に力を注いでいました。
この頃の作品はそれまでの黄金期の他を寄せ付けない精巧でかつ完全なる美と音を備えた素晴らしい作品から、より深く温かい音を求めアーチや全体のバランスをより良く変化させようとしているのが窺えます。
このヴァイオリンもまさにその代表例と言えるでしょう。

このヴァイオリンの裏板には、小さな鮮やかな形の渦巻き模様がほぼ水平に横並びに位置していて、これは同じく1728年製のヴァイオリン、J. A.アルトー所有の「アルトー・ゴドフスキー」にも見られる同様の特徴でもあります。
また横板に見られる炎のような模様は、裏板の同じ炎模様とほぼ完璧なまでに方向が一致しており、楽器を動かしながらこの模様を見てみると、とても魅力的に見えます。

この楽器は300年近く楽器もほとんど傷のない完璧な状態で保存されており、音についても圧倒的なパワーのみならず、より深い重厚な低音から輝かしい高音まで、演奏者の表現力を無限に拡げてくれるような自在な音色を備えた素晴らしい作品です。

この名器はストラディヴァリの辞書ともいえる名著”Violin iconography of Antonio Stradivari 1644-1737” by Herbert K. Goodkindに掲載されています。

*photographs by Jan Röhrman

製作地
イタリア クレモナ
カテゴリ
オールド